優良株が報われないとき 日の目見るのはまだ先
―筆者のジェイソン・ツヴァイクはWSJパーソナル・ファイナンス担当コラムニスト
今年に入って米国株が急落する中、ファンドの名称に「クオリティー(優良)」と冠し、「優良株」を保有するファンドならば損失は少ないと思うかもしれない。
だが、それは間違っている。
ウォール街で「クオリティーファンド」と呼ばれるものは、収益性が高く、安定した利益を計上し、負債が少ない企業の株式を組み入れる傾向がある。例えば、ホームセンター大手ホーム・デポ、マイクロソフト、スリーエム(3M)などは、理論的には優良株の部類に入る。だが実際には、これらの銘柄を組み入れる多くのファンドがマイナスリターンを計上している。
ここ数年間で、優良株に特化した上場投資信託(ETF)は600億ドル(約8兆6000億円)を超える規模へと成長した。今年に入ってS&P500種指数の下落率が20%に達し、弱気相場入りする中、こうしたETFはより大幅な下げを演じており、一部は25%安となっている。
米フィデリティ・インベストメンツでクオンツ市場戦略部門ディレクターを務めるデニス・チザム氏は、年初からの下落局面で「優良株がディフェンス面で機能していないという事実は、多くの投資家に衝撃を与えるかもしれない」と話す。
ブラックロックのマネジングディレクター、アンドリュー・アン氏は、一般的に優良株は割安な「バリュー」株と比べて、長い年月をかけてより多くの利益を計上すると話す。このため、足元のインフレ高進と金利上昇局面では、企業収益の価値を押し下げてしまう。
ここで1つの問題は、「優良」の判断基準が人によって異なることだ。
企業の時価総額、株価水準、足元の株価動向など、さまざまな要素がリターンを左右する。そのなかでも、「優良株はおそらく最も曖昧に定義された要素の1つだ」と、米投資会社ディメンショナル・ファンド・アドバイザーズのグローバルリサーチ責任者を務めるサビナ・リゾバ氏は指摘する。
「優良と判断されることは企業にとって好ましいように思えるが、株価があまりにも高くては優良でも意味がない」
ディメンショナルをはじめ、企業の収益性を測る総資産利益率(ROA、営業利益を純資産で割ったもの)に焦点を当てるファンドもある。このアプローチを採用したファンドの年初来の運用成績は、市場全体と比べて損失が少ない。
他のファンドも、安定した利益成長や高水準のキャッシュフロー、低水準の負債、純営業資産の増減率など、企業のさまざまな財務指標に着目している。
また、今後数年にわたって競合他社をしのぐような継続的な優位性や強みを指す「モート(堀)」がある企業に着目するファンドもある。
今年に入り、一部の「クオリティーファンド」はテクノロジー株やヘルスケア株のポジションを過去平均以上に積み増している。結局のところ、これらのセクターは過去数年にわたり、先のような財務指標や要素で最も輝きを放っていた。
ただ残念なことに、テクノロジー株やヘルスケア株は割高だ。「ヴァンエック・モーニングスター・ワイド・モートETF」のシニアプロダクトマネージャー、ブランドン・ラクスザウスキー氏は、「これらの優れた企業の多くは、経営が順調かつ効率的で収益性も高い。誰もが欲しがる銘柄なので、プレミアムがついた水準で取引される傾向がある」と話す。
下落相場で投資家がキャッシュを手にする最も簡単で痛みの少ない方法は、まず最大のリターンをあげた株を売り抜くことだ。そのため、ここ数年で最も大きなリターンを獲得し、最も「優良」とされてきた一部の銘柄に売りが殺到している。例えば、フェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズの年初来の下げ幅は57%にのぼる。グーグルの持ち株会社アルファベットも31%安、米医薬品・医療器具大手アボット・ラボラトリーズも27%安と急落している。
もう1つ残念なことがある。米資産運用会社インベスコでファクター・コアETF戦略責任者を務めるニック・カリバス氏は、「インフレ環境において、収益性の高い企業なら他社よりも逆境をうまく切り抜けられると思うだろう。だが、少なくともこれまでのところ、それが現実にはなっていない」と言う。
フィデリティのチザム氏によると、過去30年間の景気悪化局面で優良株は約8割の確率で市場全体を上回るパフォーマンスを発揮してきた。
そのため、投資家は優良株を下落相場で処方すべき万能薬と考えるようになり、持続不可能な水準まで株価を押し上げてしまった。
今年に入って株式相場は急落したものの、優良株は市場全体と比較した場合、90年以降の9割の期間よりも割高になっているとチザム氏は指摘する。
過去に市場全体を上回るパフォーマンスをもたらした要素を振り返ってみると、バリュー、モメンタム、低ボラティリティやその他の複数の特性とともに、クオリティー(優良株)もその1つに数えられると投資研究の専門家は指摘する。
しかしながら、これらの要素のうちのどれか1つに的を絞ることで、将来にわたり持続的に優れたリターンが獲得できるかどうかは定かではない。特に、投資家は株価の上昇局面で一斉に飛びつき、下げ相場に転じると一転して売り抜ける傾向がある。
一方、すべての要素に常に焦点を当ていれば、株式市場全体の動きに連動するインデックスファンドのリターンに近くなるだろう。しかも、インデックスファンドは大半のファクター投資のファンドと比べ、わずかなコストで保有できる。
ひとつだけ確かなことがある。人気絶頂期に「優良株ETF」を購入した投資家は、期待したような完全無欠のパフォーマンスを享受できなかったことだ。
およそ10年前、資産運用会社が第1弾となる優良株ETFを次々に立ち上げたとき、筆者はこう書いていた。
「急ぐことはない。ファンドは相次いで立ち上がる。あらゆる経験を積ませよう。運用担当者がリターンを出せるのか見極めるのだ。その後はもう少し待とう。ブームは必ず起こるが、飛びついてはいけない。やがて投資家たちは、優良株は過大評価されており、他の投資手法の方がうまくいくと不満を漏らすようになるだろう」
「そこまで待てば、優良株を大量に手に入れることができる。このことを覚えておいてほしい」
その時がいよいよ近づいているが、まだ少し先のことになりそうだ。
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~私見~
いわゆる「優良株ファンド」もその他大勢で毎年生成される
テーマ型ファンドとなんら変わらない事なのか??
みんなが優良だと認識すれば人気が殺到し、株価が少しでも
下がろうものならすかさず押し目が入ってくる。なので
株価は下がりにくい。。。そう右肩上がりの相場環境では
という条件がつくけれど
ワイドモートもバフェット氏が話の中で出てきたこともあり
人気のテーマの1つであるが株価は冴えないものも
当然あるだろう。1つ言えるのはどんな銘柄でも全く
下がる事なく上がり続けることは100%いや∞%ない!!
もしそんな銘柄があればそれは「詐欺」だろう
ただ、では右肩上がりに上がり続ける株はなくても
株価が長期で見れば右肩上がりに上昇する銘柄であれば
それこそゴマンと存在する。そういう銘柄は結局概ね
優良株といわれる売り上げも利益も伸び続けている銘柄に
落ち着いていくと思っている。
企業の業績よりも人間の心理状態の波によって作り出される
うねりの方が株価は上下に激しく動く。
優良株でもワイドモートでも株価が悪くなる時は必ず
訪れる時期はある。その時にガチャガチャ動かしていて
良い成績になることはないので優良株をやるんなら
それを持ち続けて株価が下がった時には将来の
有効性を確認した上で買い増しすればよく、
それが面倒であればインデックスを買えばいいんじゃ
ないかと思います。一番ダメなのはその時その時で
後乗りでトレンドに乗っかってワチャワチャする人は
常に恩恵を受けれないままになってしまいそう
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