遠のく中国AI覇権の夢、米が先端半導体に新規制
【シンガポール】米政府が米画像処理半導体(GPU)大手エヌビディアの先端プロセッサに輸出規制を課したことで、人工知能(AI)で世界の覇権を握ろうとする中国の野望に狂いが生じている。中国は米国が先端技術を独占しようとしているとして反発している。
今回の輸出規制で、アリババグループやテンセントホールディングスといった中国テク大手は、世界の最先端チップを入手する道を絶たれることになる。両社とも膨大なデータ処理が可能なエヌビディアの先端チップを使ったクラウドサービスを展開している。
コンサルティング会社インターナショナル・ビジネス・ストラテジーズのハンデル・ジョーンズ最高経営責任者(CEO)は今回の措置について「主に商用目的で利用される高性能プロセッサを標的にしており、米国は大きく一歩を踏み出した」と話す。
エヌビディアは8月31日、許可なしで中国顧客への先端チップ販売を禁じる新たな米国の規制により、売上高が4億ドル(約560億円)押し下げられそうだと明らかにした。また、中国から事業の一部を移行させる必要が生じるかもしれないとしている。
輸出規制を担当する米商務省は規制の変更についてコメントを拒否しているが、中国が米国の技術を使って軍事力を強化することを阻止するのが目的だと説明した。
中国商務省は1日、米国の措置は米中双方の企業の利益を損なうと指摘。米国はすべての国の企業を公正に扱うべきだと主張した。
新たな規制は、エヌビディアのGPU「A100」の中国、香港、ロシアへの輸出が対象となる。A100は2年前に発表された製品で、データセンター向けのAI演算に使われる。エヌビディアによると、今後投入される最先端の「H100」シリーズやさらに技術が進化するであろう将来の製品についても影響を受ける。ロシアの顧客に対しては、ウクライナ侵攻を受けて製品販売は行っていないとしている。
エヌビディアはこれまで、A100の顧客にはアリババ、テンセント、百度(バイドゥ)が含まれると明らかにしている。いずれも中国でクラウドコンピューティングサービスを手掛ける大手だ。
テンセントの広報担当者はコメントを控えた。アリババ、バイドゥは現時点でコメントの要請に応じていない。
エヌビディアは1日、米国のA100の顧客を支援するため、3月1日まで輸出する承認を米政府から得たと明らかにした。さらにH100開発の継続に必要な承認も得たとしている。同社はこれに先立ち、新たな規制はA100の既存顧客への支援とH100開発を阻害する恐れがあるとの考えを示していた。
中国はAIを戦略技術の最優先課題に掲げており、AI関連の企業や研究所に公的支援をつぎ込んでいる。だが、複雑なAIアルゴリズムのプログラミングに不可欠な先端チップはエヌビディアなど米企業に依存しており、AIの野望を実現する上でアキレス腱(けん)となっている。
エヌビディアの2022年度売上高269億ドルのうち、25%以上を中国と香港が占めた。同社の共同創業者で社長を務めるジェンスン・フアン氏は先月、アナリストとの電話会議で、中国は「当社にとって非常に重要かつ巨大な市場だ」との認識を示している。
エヌビディアは近年、中国市場との関係を深めている。エヌビディアの先端チップは、中国の監視カメラ企業が画像認識アルゴリズムを学習させるのに使われている。またエヌビディア幹部によると、最近では電気自動車(EV)や自動運転車の開発促進に向け、比亜迪(BYD)などの自動車メーカーにとっても、同社の技術が不可欠になっている。
エヌビディアは2020年、中国クラウドサービス大手の多くがAI分野で同社のA100を採用したと明らかにしていた。
前出のジョーンズ氏は、A100やH100が入手できなくなれば、特定のAI技術に取り組む中国企業は相当な影響を受ける見通しで、エヌビディアの旧型技術に頼らざるを得なくなると話す。
エヌビディアによると、中国クラウドサービス最大手のアリババでは、AIアルゴリズムの学習や高度な演算にA100が寄与している。アリババのクラウド事業に関するサイトでは、さまざまなA100の用途に触れており、ヘルスケア、金融、製造などの業種で迅速な分析を可能にすると説明されている。
エヌビディアによると、クラウド国内第3位のテンセントは、データや動画の分析など向けにA100を導入している。テンセントは4月、A100 を使ったクラウドサービスを業界でいち早く提供する1社になるとしている。
輸出規制で影響を受けるエヌビディアの中国顧客にとっては、輸出規制に指定されていない同社の旧型プロセッサを複数使うことが代替策になる。こう指摘するのは、ジェフリーズのアナリスト、エディソン・リー氏(在香港)だ。中国のGPUメーカーには、竜芯中科技術や海光信息技術などがあるが、国内メーカーへの切り替えは難しいという。
リー氏は1日のリポートで「直接的な代替メーカーは国内には存在しない」と述べている。
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~私見~
最近の半導体株の下落はこういった経緯があるんですね
中国・香港・ロシアへの輸出が禁止されててそれ以外は
OKなのであれば第三国を経由して輸入しそうな気もするが
そんな簡単なものでもないんかな??
エヌビディアの売上が下がって半導体セクターの株価が
下がるのは苦しいが中国になにゃらかんやら
力を与えてしまうのも好ましくないと思ってるので
天秤にかけると・・・うーむ、どっちも大事
ま、中国・香港・ロシアがダメになったとしたら
他の国での商売を模索したらいいし、
なにかと手を打ってくるとは思ってますが、
社長のジェンスン・ファン氏はどう考えるのか?
ちなみにジェンスン・ファン氏を調べたら台湾系アメリカ人でした。
また、エヌビディアにお株を奪われていた他の
半導体メーカーも盛り返すチャンスが到来したと
思ってもらえればいいのかなと思います。
特にインテルなんかは。。。
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