FRBが崩壊させた「何でもバブル」
――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
投資家の一部はマネーで成功するために神に祈りをささげる。残る投資家には、米連邦準備制度理事会(FRB)がいる。過去10年余り与え続けてきたFRBは、一転して奪う存在になった。ジェローム・パウエルFRB議長が罰を与えようとしていることを金融市場が恐れるのも無理はない。
13日、「何でもバブル」がはじけつつある明確な兆候が表れた。もっとも、真のバブルというよりは、緩和マネーと低インフレによる想定内の結果という方が正しい理解だろう。S&P500種指数はついに1月の高値から20%余り下落し、一般的な定義である「弱気相場」に突入した。ただ、5月の取引時間中には、すでに弱気相場入りの水準まで売られる場面があった。
最も投機的な銘柄が下げを主導しているものの、住宅など、そこまで値下がりしていなかった資産にも売りが波及する可能性が極めて高い。これは、FRBがドルの利回りを引き上げ、あらゆるものに対するドルの価値を押し上げているとも解釈できる。対円での値上がりは分かりやすい。FRBが金融引き締めに動いているのに対し、日本銀行は緩和政策を維持しているためだ。アマゾンに対するドルの「値上がり」は為替レートではなく、同社の株価の値下がりとなって表れている。
投資家がFRBによるインフレとの闘いで巻き添えを食らっているだけではない。株式や債券、その他の資産価格の下落はFRBを積極的に支援している。資産の値下がりは人々から富を奪い、貯蓄と買い控えに走らせる。
これはまさにFRBがここ数十年にわたりインフレ押し上げに向けて頼りにしてきた「資産効果」の正反対の現象だ。超低金利と数兆ドルに上る債券買い入れによる金融政策は「何でもバブル」を生み出し、実質的にあらゆる米資産の価格が最高値を更新した。ところが、FRBが方向転換したことで「何でもバブル」が崩壊している。
投資家が逃れることは難しい。ただ、すべての投資が同じようにFRBの影響にさらされているわけではない。次の動向は、最近までほぼ金融市場に限られていた影響ではなく、FRBの行動が実体経済にどれだけ影響を及ぼすかに大きく左右される。
これは同じ資産クラスの中でも見て取れる。格付け「トリプルC」の最もぜい弱なジャンク債(投資不適格級債)は、4月下旬まで米国債とほぼ足並みをそろえて値下がりしていた。米国債よりも激しい売りにさらされるようになったのは先月になってからで、FRBの金融引き締めが経済に打撃をもたらすとの懸念がいよいよ強まったためだ。
同じ影響は株式市場にも表れている。利上げによる純粋な金融市場への影響は割高な銘柄の妙味を薄れさせることであり、株価収益率(PER)の低い割安株にはあまり影響がない。ラッセル1000バリュー株指数でみると、割安株は4月20日時点で年初来で配当を含めたベースでリターンがプラスだった。これに対し、割高なグロース株はマイナス約14%だ。その後、個人消費を巡る4月のパニックの中で割安株も一時的に売られたが、経済および企業利益に対する脅威が本格的に悪影響をもたらし始めたのはここ1週間だ。先週7日以降、バリュー株は9%、グロース株は10%下げている。
次に何が起こるかはFRBと、FRBの行動が実体経済に打撃をもたらす未知のルートにかかっている。金融、とりわけ暗号資産(仮想通貨)の世界では、さらに多くのものが壊れるリスクがある。
市場は金利リスクを十分に認識している。次に脅威となるのは、インフレが深く定着することで、FRBが物価抑制に向けて経済をリセッション(景気後退)に追い込まざるを得ない展開だ。これは最近になってようやく備え始めた投資家にとっては特に危険で、企業利益が圧迫されれば、株式や高利回り社債などは一段安の展開になるだろう。ウォール街のアナリストの間では利益見通しの上方修正より下方修正の方がついに優勢になったが、それでも今年の企業利益が前年比でプラスになるとみられている。
投資家は「何でもバブル」のどの部分がいつ、どの程度のペースでしぼむのか、検討する必要がある。投機的な資産のバブルはすでに派手にはじけており、多くは2020年の水準に戻った。景気刺激策で潤沢なマネーを手にした個人投資家が選好していた銘柄も急落。「刺激策」マネーの大きな受け皿となった証券会社ロビンフッド・マーケッツの株価は高値から9割値下がりした。あぶく銭は身につかない、ということだ。
2000年のドットコムバブルでは、大企業にも苦しみが広がったのは、最も投機的な資産が崩壊してから半年後だった。消費者のムードが冷め、FRBの金融引き締めが実体経済に痛みをもたらし始めたころだ。今回は1年余りを要しているが、投資家は実体経済の不振が自らのポートフォリオに悪影響を及ぼすリスクについて、ようやく織り込み始めたばかりだ。
パウエル氏は経済に打撃を与え続けるかもしれない。そうなれば、企業利益と割安株はグロース株と同じくらいか、それ以上にひどい目に遭うだろう。FRBは強力だが、気まぐれでもあり、リセッション懸念がインフレ懸念に取って代われば、再び経済に焦点を戻す可能性がある。われわれ人間は賭けをして、運が味方についてくれるよう願うしかない。
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~私見~
「なんでもバブル」
よいネーミングセンスかなと思います(笑)
特に今回は仮想通貨、NFT、新興IPO株なんかが
それに該当するのかな?と思っています。
仮想通貨やNFTについては全く分からないのですが
新興IPO株なんかは2000年のドットコムバブルの
時みたいに利益も売上も全く上がってないけど
なんか夢みたいな未来像だけで株価が上がるって
いう程バカげてはないけど売上はバカバカ上がるけど
利益は全然出ていない。でも売上あげてるなら
その内利益が出るだろうよ。ってことで株価が上がってた
でも、冷静になったらそんだけ赤字垂れ流してて
大丈夫なんほんまに??っていう感じで
熱から冷めた投資家からの売りで大暴落となった感じ。
仮想通貨やNFTはわからないが、株式で言えば
売上と利益がしっかりと右肩上がりもしくは
景気の悪い時期でも右肩下がりにならない会社は
売ることに夢中になり過ぎた投資家が冷静に
なった時には買い戻されると思ってる。
今回新興IPOした会社の中でも
中にはそういう企業もあるはずでしっかりと
決算書などを調べる事で将来の価値に比べて
割安な会社を見つける事ができるのかもしれない
それが出来ない人はインデックスを持ってれば
銘柄の入れ替えは勝手にしてくれるので
いいかと思いますよ
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