マスク氏、ツイッターで「銀行の夢」再燃
米ツイッターを評価額2500億ドル(約33兆2000億円)超の企業に変革するというイーロン・マスク氏の思い切った取り組みの背景には、同氏が20年余りにわたって大切に持ち続けてきたビジョンがある。それはデジタル銀行事業だ。
買収後に経営者として目指す「ツイッター2.0」の構想が最終的にどのような姿になるかについて、マスク氏は少しずつ語ってきた。だが先週末、ツイッターの評価額について現在の約200億ドルの10倍以上に拡大することを想定していると従業員に述べ、自身の計画がいかに壮大なものかをうかがわせた。
この計画の要点について、ツイッターを金融面でユーザーの生活の中心に据えることだとマスク氏は説明した。この改革は、スタートアップ企業Xドットコム(現ペイパル)で同氏が経験した経営の最初の大きな挫折を思い起こさせる。
マスク氏はこのデジタル決済サービス企業の初期の成功によって富を築き、それを足がかりに電気自動車(EV)大手テスラや宇宙開発ベンチャーのスペースXを創業した。しかし、最初の妻との旅行中にXドットコム最高経営責任者(CEO)の座から追放されるという不名誉な結末により、同氏は計画のすべてを実現することはできなかった。
現在51歳のマスク氏は、ツイッターのユーザーがアプリを通じて簡単に送金し合ったり、預金の利息を得たり、それ以外にもはるかに多くのことができる世界を描いている。その理想は、同氏がXドットコムについて当初描いていた構想とよく似ている。
マスク氏は3月に開かれたモルガン・スタンレー主催の会合で、「世界最大の金融機関になることは可能だと思う」と述べた。
低迷する広告事業の改革を行った後で、事業多角化を進める野望について同会合で説明した。広告事業は同社売上高の約9割を占めている。決済手段となることで、ツイッターが売上高を劇的に増やせる可能性はあるとアナリストは指摘する。
しかし、過去に自動車や航空宇宙の分野で経験したように、マスク氏の野望は既成勢力や規制面のハードルといった大きな困難に直面している。
決済・金融の分野に進出する未来に向け、ツイッターは踏み出したばかりだ。同社は昨年11月、決済処理業者になるための第一歩として、米財務省への申請手続きを行った。今後は事業を計画する各州で、それぞれライセンスを登録する必要がある。政府のデータベースによると、ツイッターはまだカリフォルニア州での登録を行っていない。
またマスク氏は、昨年10月末の総額440億ドルでのツイッター買収に関する公の発言で、金融分野の計画については多くを語っていなかった。当時強調していたのは、言論の自由の確保により大きな力を注ぐ必要があるということだった。
同氏によると、広告主のツイッター離れにより、売上高は2021年の約50億ドルから、昨年には30億ドルに減少。同社では大規模なコスト削減と人員削減が行われたほか、新たな経営方針に不満を持った従業員が大量に辞めていった。
マスク氏は先週、従業員に株式報酬を支給すると明らかにし、皆で成果を上げれば大きな果実を手にできる可能性があるというシグナルを送ろうとした。評価額を2500億ドル以上に高めるための「明確だが困難な道筋」を考えているとも語った。
この評価額は、JPモルガン・チェース(時価総額約3800億ドル)やバンク・オブ・アメリカ(同約2300億ドル)などの金融大手と肩を並べる水準だ。厳密には銀行ではないペイパル・ホールディングスの時価総額は約850億ドルとなっている。
マスク氏は目標達成に向けたスケジュールを明らかにしておらず、コメント要請に応じていない。
同氏はアプリ経済に向けた自身のネットバンキングに関するビジョンの見直しを進めており、ツイッターを利用した、いわゆる「スーパーアプリ」の構築を一気に進める考えだ。それはテンセントホールディングスの「微信(ウィーチャット)」やアント・グループの「支付宝(アリペイ)」といった、中国IT(情報技術)大手が提供するようなコンテンツ、通信、電子商取引が融合したプラットフォームとなる可能性がある。
マスク氏は昨年、ファンクラブ主催のポッドキャストで「われわれは、中国のウィーチャットに匹敵するようなアプリすら持っていない」と発言。「私の構想は、まさにウィーチャットのようなアプリを作ってはどうかというものだ」と語った。
中国では、銀行システムやメッセージ通信システムが米国ほど発達していない。その一方で、多くの顧客にとってネットにアクセスする唯一の方法であるモバイル機器のユーザー基盤が急速に拡大している。同国のIT企業はこれらの恩恵を受けてきた。
米調査会社ガートナーのアナリスト、ジェイソン・ウォン氏は「アリペイやウィーチャットのモデルでは、広告は重要な要素ではない」と指摘。「取引やエンゲージメントに基づいている」と述べる。
マスク氏がウィーチャットの成功を中国以外の国で再現できるかどうかは不透明だ。米国では、アップルの「iPhone(アイフォーン)」とアルファベットのアンドロイドのエコシステムがスマートフォン市場を支配し、ITおよび金融各社がさまざまなデジタル決済システムを争うように提供しており、ユーザーは多くの銀行アプリやメッセージアプリに慣れ親しんでいる。
それでも、大きな可能性をみる向きもある。デジタル銀行に関するコンサルタントであるリチャード・クローン氏は、決済機能が「スーパーアプリに欠かせない要素」であり、アクティブユーザーの収益化を促進するカギになるとみている。ツイッターの売上高は、金融機能を追加する前と比べて倍以上に増える可能性があると見込む。
「マスク氏には新しいソーシャルコマースのあり方を定義する能力がある」。クローン氏はこう評している。
それがどのようなものであれ、マスク氏は宇宙旅行やEVへの新たなアプローチを模索する一方で、Xドットコムにも執着し続けてきた。
同氏は2017年、ペイパルからXドットコムのドメイン名を買い戻し、「私にとって、とても愛着のあるものだ」と語っている。
Copyright (c) 2023 Dow Jones & Co. Inc. All Rights Reserved.
~私見~
テスラと他の電気自動車メーカー(リヴィアン、ローズモーター、ルーシッド)は、もちろん車自体の性能差もあるだろうが一番の違いはイーロンマスクがいるのか?いないのか?ということなんだろうなと思っています。
確信的すぎると見るのか、思い付きが凄い人と見るのかはもっと後になってから本当に評価されるのかもしれませんが、巨大企業が乱立する中、すごい勢いで成長させていったパワーはやはり凄い!!記事に書かれているようにツイッターを単なるチャットツールから金融を絡めることができるかはわかりませんが、やはりプラットフォームを制することがいかに大事なのかが伺えます。
個別株を買う事はほぼないと思っていますが、ナスダック100組入銘柄としてテスラにはこれからも引っ張っていってほしいですし、他の企業も触発されて大きく成長していってくれることをレバナスホルダーとしては願うばかりです。
<スポンサーリンク>