半導体ブームに陰り、仮想通貨とPC販売で逆風
新型コロナウイルス流行下の爆発的な需要の伸びで世界的な供給不足に陥った半導体に、減速の兆しが出てきた。背景にはパソコン(PC)販売の失速や暗号資産(仮想通貨)市場の混乱がある。
自宅勤務や遠隔授業の普及でコロナ初期に販売が急増したPCなどのデバイスは、足元のインフレ高進で買い替えに急ブレーキがかかっている。また仮想通貨の暴落を受けて、マイニング(採掘)や高性能ビデオゲーム向けの半導体を確保しようと店舗前で野宿するコロナ初期の光景も過ぎ去った。
自動車やデータセンター向けなど一部の半導体需要はなお旺盛ながらも、インテルやエヌビディアといった大手も含め、半導体メーカーからは厳しい先行きを警戒する発言が相次いでいる。
マイクロン・テクノロジーは先週、慎重な売上高見通しを公表。サンジェイ・メロートラ最高経営責任者(CEO)は、PCとスマートフォンの販売が落ち込む中で、「業界の需要環境は悪化した」との認識を示した。同社は新たな市況に適応するため、投資計画の一部を減らす方針だ。
半導体メーカーの幹部やPC販売業者は、市況の低迷はここ数カ月で悪化したと口をそろえる。およそ40年ぶりの水準に跳ね上がったインフレにより、米連邦準備制度理事会(FRB)は積極的な利上げに乗り出しており、年初時点の大方の予想から市況が下振れしているという。
エヌビディアは主力2分野である仮想通貨マイニングとビデオゲーム向けの半導体需要の弱含みに備え、採用を減らしていると明らかにした。株価は上半期に48%値下がりした。
カリフォルニアの小売店、セントラル・コンピューターズの幹部チェスター・ヨン氏によると、顧客は過去2年間、エヌビディアの画像処理ハードウエアを購入するため、順番待ちやくじ引き、割当制に耐えてきた。今では商品が店内に豊富に陳列されており、コロナ禍で導入した購入制限も今年に入って解除したという。
同氏は「仮想通貨のみならず、株式市場も急落している。そのため貯蓄や老後の備えが大きな打撃を受けており、多くの人にとって可処分所得は減っている」
インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)では、今年のPC出荷台数が前年比8.2%減の3億2120万台になると見込む。これはピーク時から一転して大幅なマイナスだ。コロナ禍1年目は13%増、2年目は15%伸びていた。
PC出荷が落ち込んでいる要因には、新規デバイスに対する需要の低下のみならず、中国のコロナ封鎖措置によるサプライチェーン(供給網)の混乱や、ロシアのウクライナ侵攻を受けた西側諸国の制裁発動もある。中国にはPCの組み立て工場が集積している。
アナリストの間では半導体メーカーの収益予想に悲観的な見方が広がってきた。ファクトセットによると、アナリストによるインテルの4-6月期(第2四半期)売上高見通しは2月時点で約184億ドルだった。だが、足元では180億ドルを割り込み、インテルの自社予想も下回る。エヌビディアの売上高見通しも同期間に4%切り下がり、81億ドルとしている5-7月期(第2四半期)の同社予想と一致した。
バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)のアナリストは先週、「半導体不況は3〜4年おきに訪れる傾向があり、次のサイクルが迫っている可能性がある」と指摘している。
スマホ販売の失速も半導体需要への圧力を低減しそうだ。IDCでは今年のスマホ出荷台数が減少すると予想している。スマホ向け半導体大手クアルコムのアカシュ・パルキワラ最高財務責任者(CFO)は6月、下期に需給バランスが改善するとの見方を示していた。
需要に陰りが見えているとはいえ、半導体不足が近く解消するとの予想はどの半導体大手からも聞かれない。アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のリサ・スーCEOは、データセンターで使用されるサーバー向けの半導体は依然として引き合いが強く、PC販売低迷の影響を和らげていると話している。
自動車やデバイスメーカーがここ2年、調達に苦戦していた旧型半導体のひっ迫も続くかもしれない。半導体メーカー幹部らによると、数多くの半導体を必要とする電気自動車(EV)へのシフトなど、エレクトロニクス業界の長期的な変化がその理由の一つだ。
半導体メーカー各社の見通しが曇る中でも、市場全体では供給ひっ迫は続いている。調査会社ガートナーは、1-3月期に世界の半導体工場がほぼフル稼働の状態にあったと分析。世界半導体市場統計(WSTS)によると、4月の半導体販売は前年同月比で12%伸びた。
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~私見~
半導体の見通しに不安があるような報道が
最近ちょくちょく聞かれ半導体指数は下落している
確かにリモートワーク用PCの半導体や
仮想通貨のマイニング用に使われる半導体の
需要は減っているのかもしれない。
ただ、かつてPCの需要が一段落した時に
陥った半導体不況は来ないかと思っている。
記事内にもあるようにデータセンターなどの需要は
今後も堅調に伸びていくだろうし、今まで半導体が
あまり使われなかった家電や自動車、
もしかしたら建物なんかにも半導体って
組み込まれていくような可能性もあるので
ハッキリとした不況の谷みたいなのはないように
思っています。
また、求められる半導体の性能も年々上がっていく
だろうから常に最新の値崩れしていない半導体の
需要は旺盛にあると思うのでこれからも
半導体は大丈夫でしょう!!!
・・・と希望的観測で書きました。
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