メタの完全脱皮 痛みに終わるか成功するか
――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト
フェイスブックが快調に飛ばしているように見えたのは、それほど昔の話ではない。広告主導のマネーマシンが忙しく稼働し、時価総額は昨年9月まで1兆ドル(約135兆円)を超えていた。
フェイスブックを運営するメタ・プラットフォームズは目下、IT(情報技術)業界の先行きを占う象徴的存在だ。そして他の巨大IT企業以上に、メタの長期的な運命は誰にも分からない。だからこそメタの苦難はいつまで続くのか、その先にあるメタの姿はどのようなものかを今の時点で考えることは興味深い。
IT大手の株価はこのところ軒並み急落している。だがアップルやマイクロソフト、グーグル、アマゾン・ドット・コムは、その利益を生み出す構造を見る限り、いま直面する経済や規制などの課題を乗り越えるだろうことが予想される。
これに対し、メタは当面、売上高やユーザー基盤に打撃を与えかねない複数の要因によって本物の脅威にさらされると思われる。第一に、規制の矛先が向けられていること。米連邦取引委員会(FTC)や欧州連合(EU)、恐らくは米議会からも出てくるであろう新たな規制や審議中の規制だ。第二に、アップルのプライバシー方針変更が同社の広告モデルに与える影響が大きいことと、グーグルが同社のモバイル向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」でアップルに追随する可能性があることだ。第三に、TikTok(ティックトック)をはじめとする急成長中のライバルが、フェイスブックの最も若いユーザーを奪っているうえ、より高い年齢層を狙って猛追する構えであることだ。第四に、メタが年間100億ドル近い研究開発費を投じ、大がかりな賭けに出たことだ。仮想空間「メタバース」という全く新しいビジネスの構築を目指しているものの、結果が出ない可能性もある。
メタのライバルも同様の課題を抱えていないわけではない。特にグーグルは、規制当局からフェイスブック以上に強いプレッシャーを受けている。だがメタと同規模の企業で、同時にこれほど多くの課題に直面しているケースは他にない。
これらが意味することを、未来学者たち――大学の教壇に立っていたり、フォーチュン500企業に助言したりするような人たち――の専門用語で言うと、メタの未来を表す「可能性の円錐」が、同程度のIT企業と比べて突出して幅広いということだ。
「可能性の円錐」の一方の端に描かれる未来はこうだ。メタは今後もユーザーを奪われ、人々の関心が遠のき、収入が減り続ける。屈辱にとどめを刺すように、メタではなくアップルがメタバースを完成させ、マーク・ザッカーバーグCEOの大胆な方針転換は失敗に終わる。最終的にメタは競合相手に吸収されるだろう。それはティックトックを運営する中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)かもしれない(まずありえないと思われるのは承知の上だが、正しい未来予測とはあらゆる可能性を検討することだ)。
もう一方の端に描かれるシナリオで、より可能性が高そうなのは、メタが結局は、「メタバース企業」に変貌する目標をどうにかやり遂げることだ。もちろんそれは完璧ではないだろう。売上高が落ち込み、過去に達成した水準を取り戻すのに多くの年月を要するかもしれない。それはフェイスブックやインスタグラム、ワッツアップをユーザーが可能な限り利用するように仕向け、結果として高い関心を獲得し、それを広告主に販売するという手法で達成されたものだ。だがメタバースは、フェイスブックが広告を主な収益源としない新たな方法で利益を生み出す機会をもたらすはずだ。
<足元は下り坂>
メタの未来にもっと踏み込む前に、現在について簡単におさらいしよう。
ある意味、それは容赦のない現実だ。アップルが昨年導入したターゲット広告のデータ利用を制限する措置が、メタの主力事業モデルを直撃しており、さらに経済的・地政学的な不透明感がデジタル広告全般に悪影響を及ぼしている。メタの1-3月期(第1四半期)の増収率は2012年の上場以来最も低かった。メタはアップルの措置によって2022年だけで100億ドルの減収につながると予想する。
同社のアプリ全体のユーザー数は基本的に頭打ちだ。主力のフェイスブックのデイリーアクティブユーザー(DAU)は実際、昨年10-12月期(第4四半期)に前期比で減少した。デービッド・ウェーナー最高財務責任者(CFO)は「青い」アプリ(フェイスブック)のユーザー数の伸びは止まり、現在の約20億人前後で推移するとの見方を示した。
こうした状況を受け、同社の株価は過去9カ月で半分以下に下がった。ITセクター全体を大きく上回る下落率だ。
今後、さらに逆風が強まる一方であることを示す証拠には事欠かない。
グーグルは、アップルと同様のプライバシー方針の転換を導入する考えを明らかにした。そうなれば、メタは世界全体の約4分の3を占めるスマートフォンユーザーの個人データについて、さらにアクセスを制限される可能性がある。
一方、ティックトックは、メタにとって最も価値があり、将来的にも最も重要な年齢層である若者を大量に取り込んでいる。ティックトックは2020年、ユーザーが1日に費やす時間数でフェイスブックを抜いた(アプリ調査会社アップアニー調べ)。同じ頃、アプリの世界ダウンロード数でティックトックは首位に立った(分析会社センサータワー調べ)。
ティックトックの広告事業は緒に就いたばかりだが、インサイダー・インテリジェンスの予測では、2022年末にはスナップチャットとツイッターの合計を抜き、2024年にはユーチューブに追いつく規模になると見られる。
こうした懸念材料を抱える中、メタのメタバース事業への旋回は、すでに始まっているものの、実現までの道のりはまだ遠い。ザッカーバーグ氏はメタバース事業が最長で5年間は赤字となり、構想実現に必要なテクノロジーの一部は10〜15年を要する可能性があると述べている。
メタの最高技術責任者(CTO)で、仮想現実(VR)とメタバースに特化した「リアリティー・ラブズ」を率いるアンドリュー・ボズワース氏は、人々が快適に長時間装着でき、眼鏡と同じような感覚で身に着けられるVRや拡張現実(AR)のシステムを作ることは「この業界が60年間取り組んできたどんな課題にも引けを取らない難しさだ」と話す。
<不透明な未来>
成長を続ける取り組みの一環として、メタは最近、人工知能(AI)技術者を研究室に集中させるのではなく、製品チームにも配置することにした。AIは同社が手がける様々なものに関係するが、広告ターゲティングは依然として重要な位置を占める。フェイスブックのマイクロターゲット広告の能力は、同社が集める個人データの多さだけでなく、AIを駆使してよく似た別の消費者にマッチングさせる能力にも左右される。
メタはこのほか、インスタグラムやフェイスブック内に広告主がショップを出す取り組みを進めている。まだ初期段階にあり、小売業者の一部からは不満の声も上がる。だがメタが運営するサイトやアプリで行われた販売は、AIが必要とするデータの収集に役立ち、端末メーカーの変更措置で失われたデータを補うことができる。
メタはVRや(VRと現実世界を融合させた)複合現実のヘッドセットに多額の投資をしているが、それによってデータ収集に多くの新たなチャンスが生まれ、場合によってはさらに効率的なターゲット広告が可能になると、ニューヨーク大学スターン経営大学院の教授で「定量的未来学者」を自称するエイミー・ウェブ氏は言う。
ユーザーがメタの作ったヘッドセットを使用するのであれば、グーグルとアップルのいずれにも、法律で許容される範囲のデータの収集を妨げられることはない。さらに言えば、ボディーランゲージや姿勢の認識、視線の追跡、声の聴取などが可能なヘッドセットは、メタに前例のない膨大な情報量をもたらすだろうとウェブ氏は言う。
「新しい種類のデータやセンサーが使われる場合、必ずユーザーに通知することを当社は約束している」とボズワース氏は言う。同社はまた、利用方法に制限があるクラウドにデータを送るのではなく、センサーデータの処理を可能な限りヘッドセット上で行うことを目指していると同氏は続けた。
そのような情報があれば、メタはわれわれが経験したことのない繊細な――そして潜在的にはより巧妙な――方法で広告を見せられるようになるだろう。メタバースの元祖である「セカンドライフ」を開発したリンデンラボの創業者フィリップ・ローズデール氏はそう話す。
「メタバースではもはや、広告がどこにあるのか分からない」とローズデール氏は指摘。「現実世界では、広告は正方形や長方形の枠に入っており、無視するかどうかを選べる。メタバースはそうではない。通りの向こうに見えるあの人物が広告になる。必ずしも実在の人物とは限らない」
メタバースにおける広告のあり方を決めるという点で、同社はまだ初期段階にあるとボズワース氏は言う。同氏の考えでは、業界がいま結論を出そうとするのは「先走っている」という。
テレビ広告の有効性が証明されたのとほぼ同様の方法で、われわれの周囲にあって知らず知らずに影響を受ける可能性のある広告は、ずっと大きな効果を発揮するかもしれない。さらに言えば、ヘッドセットで収集したすべての生体データから、性的指向や精神状態といった情報がメタのシステムに迅速に伝えられ、その情報が広告主に販売される可能性もあるとローズデール氏は付け加えた。
メタは2021年11月、性的指向あるいは政治志向といった慎重な扱いが必要なトピックで、広告主がユーザーを明確なターゲットにはできないようにした。一方で、メタの強力な「類似オーディエンス」機能は、AIを活用して、広告主がすでに標的とするオーディエンスと人口動態データや興味、行動が一致するフェイスブックユーザーを新たなターゲットにするものだ。
広告以外にも、同社がメタバースから収益を上げる方法を探り出そうとしている証拠が早くも見られる。
例えば、メタは最近、4月に導入したメタバースの新しい販売プラットフォームを通じて仮想グッズを販売した場合、価格の最大47.5%を手数料としてコンテンツクリエイターから徴収する考えを示した。
メタはまだ試していないが、競合するメタバースで絶大な人気を誇るのが、仮想不動産の販売だ。セカンドライフ(広告事業は行っていない)は何年も前から1仮想エーカーにつき月約20ドルの財産税を徴収し、収益の柱にしているとローズデール氏は言う。
現時点で、メタは仮想不動産を通じた金もうけには関心がないと、ボズワース氏は言う。
たとえアップルがヘッドセット市場の覇権争いに勝利したとしても、メタには十分にメタバースで金を稼ぐチャンスがある。メタがフェイスブックという社名だった頃、アップル製iPhone(アイフォーン)が同社の成長を勢いづけたように、アップルが売り出すスタイリッシュで使いやすいVRまたはARヘッドセットは、将来メタの手で――他に誰がやるというのか?――実現されるメタバース型ソーシャルネットワークにとって最適の端末になるかもしれない。
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~私見~
結局、現在のフェイスブックの広告は
iOSやアンドロイド経由する必要があり
そこに最近規制が入っているから収益が落ちている
広告業をメインにしていたらその内規制される
のではないかな?と思うが考え違ってる??
Tiktokの収益源が広告でなければすれは
おナスの勉強不足です。。。
で、フェイスブック(メタ)がどうするか?って
なると自分のところで囲い込めるような
仕組みを作るってことになるよね当然
要はプラットフォームを作れば
そこの支配者は自分であるので他から
とやかく言われることもないし規制もない
ただ、その囲い込みってのが難しいんでしょうけど
なのでメタバース事業が成功するまでは
広告収入は下がるはメタバース事業に
カネをつぎ込むはと株価にとっては
一番しんどい時期がこれから続くのかも
しれないけど一番苦しい時に買った株は
メタバース事業が軌道に乗ればものすごい
事になりそうではある。
当初の株式投資の基本である
「企業を応援する」ってのが出来る人は
気長にメタ社が苦しい時期を通り越して
世界を席巻できるようになるのを
見守るってのもいいかもしれませんね
おナスは間接的にレバナスで応援させて
いただきます(;^_^A
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