米EV急速普及も充電器不足、補助金活用されず
全米に電気自動車(EV)の充電スタンド網を構築する取り組みは、遅々として進まない。各州が、新しいサービス産業の立ち上げに割り当てられた公的資金をうまく分配できずにいるためだ。
バイデン政権は、新しい充電ステーションの設置に向け、全米の州に計75億ドル(約9700億円)を支給する構えだが、最近の同様の取り組みは、それが前途多難なことを示唆している。フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル車排ガス不正問題の和解金28億ドルの一部として、州は充電ステーションに利用可能な4億2400万ドルの資金を受け取った。4年以上がたった今、使われたのはその48%にとどまる。
イリノイとコネティカットを含む6州は、VWの和解金を充電設備に使用する計画を明らかにしているが、まだ一切交付していない。調査会社アトラス・パブリック・ポリシーのデータによると、4州は資金を低排出のバス車両など他のプロジェクトに利用する計画だ。ハワイ、ニューメキシコ、サウスダコタ、ニューヨークを含む30州は、利用可能な資金のほとんどを交付している。
テキサス州は昨年11月、充電設備向けのVWの和解金2100万ドルを先着順で分配した。記録によると、資金は1分以内に全てなくなった。申請は251件あり、2社が資金の85%を獲得した。石油大手シェルとサービスエリアチェーン運営バッキーズだ。
「ショックだった。今思えば、われわれは少し遅かった」。テキサス州オースティンを拠点にコンビニエンスストアを運営するTXBのケビン・スマート最高経営責任者(CEO)はこう述べた。同社は、既存の12〜15店舗に急速充電器を設置したいと考えていたが、メールを送るのが遅すぎたため、資金を受け取れなかった。
予想される需要増加に備え、新しい充電設備が全米で必要とされている。EVの先駆企業テスラの成功を受け、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターをはじめ大手自動車メーカー各社が車両の電動化を加速させている。ジョー・バイデン大統領は、2030年までに販売される新車の半分をEVまたは代替燃料車(AFV)にすることを求める大統領令に署名した。
アトラス・パブリック・ポリシーによると、米国では昨年、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数が60万台超に倍増しており、ガソリン価格が数年ぶりの高値を付ける中、ここ数週間の販売台数に占めるEVの割合は6.6%に達している。
しかし、カリフォルニア州を除き、数百万台のEVの給電に必要な充電ステーション網はまだ存在しない。環境保護主義者も自動車アナリストも一様に、「ニワトリが先か卵が先か」の問題だとし、それが米国でEVのさらなる普及を妨げる原因になっていると指摘している。
EVの充電のほとんどは自宅で行われるが、充電設備が少ない、または全くない地域には充電可能な公共のスポットが数千カ所必要だ。バイデン政権は、2030年までに公共の充電器を50万基設置したい意向だ。コンサルティング会社マッキンゼーの試算によると、最大で120万基必要になる。
政府のデータによると、米国の公共充電器は現在のところ約9万3000基で、そのほとんどは充電に数時間かかる。民間投資も不足している。大半の充電ステーションを黒字化できるほどEVの普及が進んでいないことが一因だ。
州にとって悩ましいのは、EV充電設備向けの公的資金が、新市場の初期の勝者と敗者を本質的に決定付けることになることだ。インディアナ州では、VWの資金のうち550万ドルを電力会社に交付することを決定したが、これは旧来の電力独占が21世紀の新市場に拡大されることになりかねないとの懸念が一部から上がっている。州当局は、電力会社であれば、優先道路の大部分に充電器を設置でき、1カ所当たりのコストも低く抑えられると述べている。
インディアナ食品・燃料協会のエグゼクティブディレクターを務めるスコット・アイマス氏は、ガソリンスタンドはEV充電器市場に参入したがっているが、自分たちが電力を依存している電力会社と公平に競争できるのかを疑問視していると話す。「小売業者にとって、現時点ではもうけのチャンスではない」
特に全米で不足しているのが、バッテリーを約30分で充電できる高速充電器だ。市場をリードするテスラは自社の顧客向けに急速充電器網を構築したが、政府のデータによると、米国には誰でも利用可能な急速充電ステーションは5000カ所に満たず、高速充電器は1万基程度だ。現在のEVのほとんどは、1回の充電で数百キロしか走行できない。
ニューハンプシャー州が高速道路沿いに急速充電器を設置するため、2019年にVWの資金を最初に交付しようとした際、受け取る相手を見つけられなかった。非営利団体クリーンエナジー・ニューハンプシャーのエグゼクティブディレクターを務めるサム・エバンスブラウン氏は「彼らは非常に多くの要件を課したため、真面目な充電器企業はいずれも『それは無理だ』となってしまった」と述べた。
「あれは勉強になった」。ニューハンプシャー州環境サービス局大気資源部門のティム・ホワイト氏はこう話す。同州はその後、交付プロセスを簡素化し、現在35カ所の契約に向けて取り組んでいるという。
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~私見~
電気自動車が普及すると地球環境にやさしい・・・
って思ってたけどそれだけ大量に電気を
供給する為に電力会社は発電しなくてはならず
その発電は化石燃料で行われていたら
なんか本末転倒な感じがする。。。
またガソリン普通車だったら給油だけなら
1分もあれば満タン入るだろうけど
電気の場合、急速充電器でどれくらい
時間かかるんでしょうか?それが普通の
充電だったら何時間レベル??
1回の充電で数千キロ走れるならいいけど
そんなには走れないだろうから
まだまだ本格普及は先なのかな??
ただ、スマホの時もそうだったけど
一般に当たり前に普及しだしたときから
関連企業に投資しても既に遅いので
こういった全体の10%、20%くらいの
普及率の時にキーとなる企業に投資して
爆発的に普及するまで待てたら
大きな利益が得られるんではないかと
思います。
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