米金融市場、次の破綻の芽はどこに
――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト
潮が引いて初めて、誰が裸で泳いでいたのかが分かる――これは著名投資家ウォーレン・バフェット氏の印象的な言葉だ。今年、市場から潮が引いたのは間違いない。だがほとんど問題は起きていない。今回は裸の泳ぎ手がそれほど多くなかった可能性があるのだろうか。
楽観的な見方はこうだ。問題を起こす張本人――借金で元手を膨らませる投機家――が過去2年間ですでに窮地に陥り、いつもの策略を巡らす余裕がなかったのだろう。一方、悲観的な見方はこうなる。破綻が起きるのはこれからだ。
まずはポジティブな面を考えよう。最近の一連の危機を受け、投資家は危険を再評価し始めている。2020年初頭には新型コロナウイルス大流行のショックから、レバレッジ取引や米国債を担保にした翌日物借り入れをめぐる深刻な問題が露呈した。米連邦準備制度理事会(FRB)が介入して市場を下支えしたが、国債市場の読みが外れて大損を被った債券ヘッジファンドは賭けを抑制した。
2021年1月にはオンライン掲示板レディットに集う個人投資家がゲームストップなどの「ミーム(はやりネタ)株」に押し寄せ、株価を急騰させた。その結果、下落に賭けていた空売り筋は数十億ドル規模の損失を出した。ゲームストップ株に大がかりな空売りを仕掛けていたメルビン・キャピタルは今年ついにファンド閉鎖に追い込まれた。他のヘッジファンドでも売り持ちを集中させる戦略は見直された。
さらに昨年3月には――市場がまだ超強気だった頃――、ヘッジファンドのアルケゴス・キャピタル・マネジメントが破綻し、同社に資金を融通していた複数の投資銀行が計100億ドル(約1兆2700億円)前後の損失を被った。反省した投資銀行はヘッジファンドとの取引を見直し、クレディ・スイスは同事業からの完全撤退を決めた。ここでもリスク管理者の権限を強化することが、再発リスクの低下につながっている。
秋を迎えると、英中央銀行イングランド銀行のタカ派姿勢の発言などから利上げが意識され、為替や債券のトレーダーが織り込み始めた。だが11月に英中銀が金融引き締めに転じるのを見送ったことで市場は急反発した。マクロ経済ニュースに基づく戦略のファンドにとって、それはボラティリティー(変動性)の予行演習となった。それ以降、ボラティリティーは世界の市場を支配している。
これらの大きな、だが巨大ではないショックが全てリスク志向を後退させる方向に作用した。それは2022年の株式、債券、商品、為替の大荒れ相場ではじき出されるかもしれない高レバレッジのプレーヤーがすでに減っていたことを意味する。
従来型金融の世界でこれまでのところ、唯一の大惨事となったのはニッケル市場の凍結だろう。英ロンドン金属取引所(LME)は相場急騰を受け、大量の売り持ち高を抱える中国企業を救済するという誤った判断でニッケル取引を停止した。これは混乱を招いたものの、金融システムの重要な部分を崩壊させるほどではなかった。
暗号資産(仮想通貨)に関しては、いわゆるステーブルコインの「テラ」暴落をはじめとする最悪の事態がいくつか起きている。だが従来型金融とのつながりは依然小さいため、市場の主流への影響はほとんどない。
もう一つの重要な支柱は、銀行が過去20年に比べて格段に強化されていることだ。世界金融危機が起きた2008年以降の改革のおかげだ。結果的に、銀行は以前より楽に苦境を乗り切れるようになった。
好材料はこのくらいにしよう。筆者が問題が起きていないことについて質問した金融機関の幹部たちから、現在のムードを凝縮する同じ答えが返ってきた。「今のところは」
バフェット氏が裸の泳ぎ手を論じるずっと前、経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイスは「ベズル」という造語を用いた。好況時に積み上がり、経済が悪化した後にようやく発覚する不正損失のことだ。10年間続いた(2020年にごく短期間中断したが)強気相場は終わり、この先ベズルが大量に発覚する可能性がある。
近年最大のベズルは、発覚までに相当な時間がかかった。2000年3月のドットコムバブル崩壊の後、米エネルギー大手エンロンの巨額不正会計疑惑が浮上し、過去最大(当時)の倒産に追い込まれるまで1年半を要した。2008年の金融危機の後は、金融と実体経済の双方で何年にもわたり不祥事が続いた。
金融から実体経済に向かい、再び金融へと戻るフィードバックループもやはり、深刻な問題が起きるまで時間を要する。すでに最も弱く最も重い負債を抱える発展途上国は、スリランカが危機に陥り、ガーナが厳しい緊縮政策を強いられるなど苦境に立たされている。ドル高と米国債の利回り上昇は、ドル建て債発行を選択し、ドルコストと現地通貨収入のミスマッチを抱える国々を苦しめている。
1994年と1997〜98年には新興国市場の危機――1994年のメキシコ「テキーラ危機」、1997年のアジア通貨危機、98年のロシア国債デフォルト(債務不履行)――がウォール街にフィードバックされるまで1年以上を要した。だが実際にそれが起きると、ウォール街の金融安定性が揺らいだ。さらに困ったことに、指標となる米10年物国債のピーク時と比べた投資家の損失はすでに1994年のショック時よりずっと大きくなっている。
歴史が役に立たない新たなリスクが二つある。第一に、中央銀行が債券買い入れによって前例のない流動性を市場に注入したことだ。流動性の欠如は、債務の借り換えの障害となるため、通常は金融面で問題を引き起こす。FRBや他の中銀が流動性を干上がらせれば、問題が顕在化するかもしれない。
第二に、規制の緩いシャドーバンク(影の銀行)が発行する膨大な量の未知のプライベートデット(PD)が存在することだ。筆者が主に懸念するのは融資が焦げ付くことではない(その可能性はあるが)。むしろ危険なのは、プライベートデット・ブームが金融緩和の機能の一つだと判明することだ。金利上昇で主流の投資商品の魅力が増し、投資家がプライベートデット・ファンドに資金を留め置く気がなくなれば、貸し出し余力は徐々に低下する。そうなれば、経済を冷え込ませ、企業はローンの借り換えが難しくなりかねない。この種の波及効果は何年もかけて金融トラブルに発展する可能性がある。
筆者はこれから大勢の水着をつけていない泳ぎ手が姿を現すのではないかと考える。この2年間の危機対応練習によって、ウォール街が「急停止」に直面するリスクが緩和されていることを期待したい。
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~私見~
うーん なんか難しい事言ってるけど
結局は「何か得体のしれない大きな危機」が
来そうだから気を付けようね!!
ってことでいいんかな??
まだ利上げは2回しか完了しておらず
それ以外にもQTが過去一の金額を予定していたりと
これでもかと下落圧力が掛かっている。
それでどこまで株価が下がるかは予測ができないが
結局、握力高めで株券を握り絞め続ける事と
そんな過去最大級のハリケーン並の
下げが直撃している中でも負けずに買い向かっていけば
その内、株価は上がっていくと信じるきる事
そうやって過去200年株式は
右肩上がりを続けているのが歴史が
しっかいと証明している。
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