ウォール街のエアビー、遊休資本を有効活用
ウォール街の銀行は市場を活性化し続ける余力を失いつつある。シェアリングエコノミーがその解決策になるかもしれない。
ウォール街の大手行やシリコンバレーの大手ベンチャーキャピタル(VC)から支援を受けるスタートアップ企業キャピトリスが目指すのが、まさにそれだ。エアビーアンドビーが空き部屋を民泊施設に変えたように、キャピトリスはブラックロックなどの投資会社の遊休資本を資産に変え、銀行がそれを利用してあらゆる種類の取引を円滑化できるようにしている。
銀行は、証券の買い手と売り手の仲介をしたり、企業に資金を貸し出したりするなど、市場で重要な役割を担っている。規制当局は銀行に対し、そうした各取引のための資本を蓄え、預金者を損失から保護する緩衝資本を確保するよう求めている。
2008年の金融危機以降に導入された新規制により、銀行は緩衝資本の積み増しを余儀なくされた。銀行は過剰に資本を積み上げ、かつて金融システムを通じて流れていた数兆ドルの資金が退蔵されることになった。銀行の安全性は高まったが、特に市場が混乱している際には、融資をあまり引き受けることができなくなった。
そこでキャピトリスの出番がやって来た。同社は資産運用会社や年金基金、マネー・マーケット・ファンド(MMF)からの投資と、銀行が仲介したり引き受けたりする取引とをマッチングしている。創業者で最高経営責任者(CEO)のギル・マンデルジス氏によると、同社は過去2年に投資家から銀行が利用する資金を約600億ドル(約7兆6100万円)調達し、数兆ドルの取引ポジションを削減した。
世界有数の銀行であるJPモルガン・チェースとシティグループは、キャピトリスを利用してトレーダーを解放し、より多くの顧客に対処できるようにしている。両行はVCのセコイア・キャピタルとアンドリーセン・ホロウィッツとともに、キャピトリスに出資もしている。キャピトリスは3月の資金調達ラウンドで、16億ドルの評価を受けた。
マンデルジス氏のアイデアは新しいものだが、似たようなコンセプトは昔からある。銀行は長年、大口の企業融資を他の銀行や投資家に切り売りしてきた。キャピトリスは、このシンジケーションの概念を利用して、為替スワップや与信枠などあらゆる銀行商品を、投資家に販売可能な証券やローンに変える方法を考案した。
例えば、シティグループは顧客の取引に連動した株式バスケットを保有している。キャピトリスは、投資家の資金を使用して、シティグループの取引を実質的にコピーする。つまり、シティグループのバランスシートからリスクを排除するデリバティブ(金融派生商品)契約を結ぶ。それによってシティグループはその取引から解放され、より多くの取引を扱えるようになる。また、投資家は一定の支払いを受けることができる。
銀行の資本ニーズを外部から調達するキャピトリスのビジネスは、まだ黎明(れいめい)期にあるが、市場や経済全体における銀行の役割を一変させる可能性を秘めている。取引に必要な資本を取引を履行するプロセスから切り離すことで、銀行は金融システムを崩壊させかねないほどのリスクを負うことなく、より多くの顧客(法人と個人の両方)にサービスを提供できるようになる可能性がある。最終的な狙いは、取引量や融資需要の急増を市場がもっとうまく吸収できるようにすることにある、と同社の創業者たちは話す。
マンデルジス氏は「これが普及すれば、資本は引き受け業務から完全に切り離されることになる」とし、「かつてそれらが一体化していた時代はどうしていたんだろうと、いずれ振り返って思うようになるだろう」と述べた。
銀行が資本を節約しているとの見方や、銀行がそうすることは問題だという意見に誰もが同意しているわけではない。高頻度取引業者や非銀行系金融機関をはじめ、銀行が現在敬遠している業務を引き受ける多くの市場プレーヤーが登場している。
しかし、銀行の資本退蔵が市場の混乱を悪化させていることを示す証拠はある。その一例が、資金不足によって主要な短期融資市場で借り入れコストが急騰した2019年9月だ。2020年3月にも、超安全とされる米国債市場が突然不安定になり、銀行がそれを安定化できない事態が起こった。いずれも、米連邦準備制度理事会(FRB)が介入せざるを得なかった。
「2008年以前は、誰もバランスシートについて考えていなかった」。キャピトリスの共同創業者で会長のトム・グローサー氏はこう話す。「今や、それが全ての決断の原動力になっている」
キャピトリスの着想を得たのは、テニスコートだった。母国イスラエルでバーを経営した後、銀行業に携わり、その後にウォール街で起業したマンデルジス氏は以前、モルガン・スタンレーの取締役でトムソン・ロイターの元CEOであるグローサー氏と定期的にテニスをしていた。
2人はサーブの合間に、金融業界で断絶が拡大していることについて議論した。投資家や資産運用会社は資金が潤沢にあり、新しい投資方法を探していた。一方、銀行は資金不足が原因で潜在顧客に背を向けていた。
マンデルジス氏もそうした顧客の一人だった。当時、債券取引プラットフォームを運営するEBSブローカーテック(マンデルジス氏が最初に立ち上げた会社を買収したのが、この会社の親会社だった)のCEOを務めており、同社は市況の悪化で予期せず追加証拠金を請求された場合に備えて与信枠を必要としていた。
銀行はかつて、店頭で個人顧客にアメを配るように、企業にそうした与信枠を与えていた。しかし、金融危機後、規制当局は銀行に未使用の与信枠に対してさえも資本の確保を義務付けた。その結果、銀行は、かつては多くの人に与えていたそうした特典を、最も大口の顧客や利益の高い顧客のために取っておくようになった。それ以外の顧客は大金を支払うか、与信枠なしでやり過ごすしかなくなった。
マンデルジス氏はブローカーテックの取締役に対し、与信枠は高くつくが、それだけの価値はあると話したという。危機の際には与信枠が会社の生死を分けかねないためだ。マンデルジス氏は15行を回ったが、どの銀行も見積もりすら出してくれなかった。
そんなとき、ウーバーやエアビーアンドビーを生んだプラットフォームエコノミーに関するオーディオブックがヒントになった。マンデルジス氏は、それと同じことを資本市場でやったらどうだろうとグローサー氏に問いかけた。そして2017年、もう1人のパートナーであるイゴール・テレシェフスキー氏とともにキャピトリスを立ち上げた。
初期の顧客の一社は、ステート・ストリートだった。同行は2018年、FRBのストレステスト(健全性審査)によって、成長していた為替取引業務に対して資本の積み増しを余儀なくされることを懸念し、キャピトリスに助けを求めた。同行の市場部門でリスクと財務資源を管理するトバイアス・クラウス氏が明らかにした。キャピトリスは、取引後のリスクを引き受けてくれる投資家を見つけ、同部門の取引量を過去5年で倍増させる後押しをした。
ステート・ストリートはキャピトリスに出資し、クラウス氏は同社の取締役に就任した。
「キャピトリスは資本を解放し、それを別の場所に投資できるようにする手助けをしてくれる」とクラウス氏は述べた。
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~私見~
なんか難し過ぎてよ~分からん。
ま、銀行がより収益を得るための新たな方法として
キャピトリスと組んで頑張っていってます!!
みたいなことなんでしょうね
複雑な方法は時によりよい収益をあげるかも
しれないけど複雑さゆえに何か予期せぬトラブルが
生じた際にはとてつもない損失を被る可能性を
秘めているからあんまり訳の分からんことには
銀行は携わらない方がいいんじゃないかなぁって
個人的には思います。
ただそれって自分は分かってないだけ、
理解していないだけなんだけど簡単なものかも
しれないので良く分かってもないのに
難色を示すのはダメだなとも思います。
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